『一番思い出深かった仕事を教えてください』
200X年からフリーで活動を始めたトヨクラさん。
フェルトと紙と糸を使った一見かわいらしい、でもよくみるとどこかおかしいこどもたちが描かれたシニカルな作品は見る人をいつもはっとさせます。
はっきりしたコンセプトを持つオリジナルの作品と、依頼されることで始まるイラストレーションの仕事との違いをどうとらえられているのか、そのあたりも気になります。
着々とキャリアを積まれる中、忘れられなかった仕事とは?
ーーー雑誌内のBOOK IN BOOKの表紙とのことですが。
トヨクラ(以下 ト)▶はい、主婦の友社さんの『雑貨カタログ』です。
ーーー依頼の経緯を教えてください。
ト▶アートイベントに出展しているときに、お客さんから「先月号の『雑貨カタログ』の表紙に載ってたよ」と言われ、びっくりしてすぐにその号を買いに本屋さんにいきました。
そしたら本当に雑貨屋さんで販売していた自分の商品が表紙の一部に載っていて、すぐにポートフォリオを編集部に送りました。
すると、1ヶ月ほどたってから仕事の依頼の連絡がきました。
ーーー1ヶ月で連絡が?
ト▶そうです、(当時の)編集長から電話をもらいました。
ーーー初めてのお仕事だったんですか?
ト▶はい、新大阪駅の喫茶店で生まれて初めてのイラストの仕事の打ち合わせをしたのを今でも覚えてますね。
ーーー打合せに何を持って行きました?
ト▶よく覚えてないんですが、ポートフォリオと名刺とノートとペンぐらいでしょうか。
ーーー実際の制作はオリジナルを描く感じとはやはり違いましたか。
ト▶そうですね。初めての仕事で、相手の要求に応えようと意気込みすぎて空回りして。
ただ、そこはうまくいつも通りに描くように編集長がディレクションしてくれて。
ーーーディレクションされることも初めて?
ト▶はい。ラフのだめだしもビシッとしてくれて、自分の良さを引き出してくれて。
そのことがとても印象深いです。
ーーー初めてづくしですね。
ト▶雑誌の中面だけど、かなり肩に力が入っていましたね。
その分、出来上がって雑誌を見たときはかなり嬉しかったです。
ーーー参考にした資料があれば教えてください。
ト▶子供を描くのに、某企業の子供服のカタログを参考にしています。子供のいろんなポーズが載っているのでよく使いますね。あと、風景は公園の写真を参考にしています。
ーーー(写真1)これはダメだったラフですか。
ト▶たぶんそうですね。依頼時にキーワードで「さわやかさ」というのがあったと思うんですがその言葉にひっぱられて大学生ぐらいのカップルを描いてしまった記憶があります。
大学生にさわやかなイメージがあったんでしょうね。
ーーー(写真2)カラーのラフ、これも担当者に見せるんですね。
ト▶基本、カラーラフしか見せていません。
最初にサムネイルでアイデアラフをいくつか描いて、その中からいいと思うのをカラーラフまで仕上げます。
そしてカラーラフの段階で、お互い話し合って修正作業します。
僕の場合、切り貼りの絵なので、あとあと修正が利きにくいため、
カラーラフで構図や色味まで詰める必要があるんです。
ーーー(写真3)そして本番。やはりラフとは質感が違いますね。きれいです。この質感もトヨクラ作品の魅力ですね。
ト▶ありがとうございます。
この仕事が僕のイラストの仕事の原点。
このときのテンションを保ち続けたいです。
ーーー好きな映画を教えてください。
ト▶とくに映画好きではないんですが、『ニューシネマパラダイス』や『東京日和』『茶の味」とか好きです。
ーーー目玉焼きには何をかけますか?
ト▶えっ。唐突ですね。残念、何もかけない派ですねー。
ーーーありがとうございました。
ト▶ありがとうございました。
初めてのお仕事が原点であり、そして一番の思い出。いいお話でした。
それにしても目玉焼きに塩もかけないとは…あっさり味がお好みなんでしょうか。
とっても参考になりました!
(2011.9.10)
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